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ブレイクダンスバトルの世界最高峰の大会「Red Bull BC One」。この2016年大会で優勝したのは、なんと19歳の日本人でした。その名も「Issei」。ここではB-boy界のヒーローとなった彼の経歴を紹介するとともに、日本人初の優勝を決めた2016年大会決勝の模様を解説します。

B-Boy「Issei」って何者?

「Red Bull BC One」という世界最高峰のブレイクダンスバトル大会で、日本人初の優勝を手にした19歳のIsseiくん。ここでは彼の経歴を紹介するとともに、決勝戦の模様を徹底レポートします。

Isseiくんの本名は堀壱成(ほり・いっせい)。1997年6月1日生まれの現在19歳で、出身は福岡県久留米市です。身長は160cm、体重56kgと小柄な体型ですが、圧倒的なスピードと高い精度のダンススキルを持つ、日本屈指のブレイクダンサーとして知られています。

九州男児新鮮組 Red Bull BC ONE ASIA FINAL

彼がダンスを始めたのは福岡の名門ダンススクール「STUDIO MJ」に通い始めたのがきっかけでした。こちらの動画は同スクールのブレイクダンスチームでIsseiくんも所属する「九州男児新鮮組」が2013年のRed Bull BC ONE ASIA FINALで披露したものです。

Red Bull BC ONE ASIA FINALのshow caseでソロを踊るIsseiくん。

出典:https://youtu.be/iC1C7HP_XqI

「九州男児新鮮組」は国内のあらゆる大会を制し、イギリスの世界大会「UK B-BOY CHAMPIONSHIPS」にも日本代表としてパフォーマンスを披露する超強豪チーム。

そんな中にあってもIsseiくんはソロパートを任されるほどの実力を持ち、リーダーとして実力派集団をまとめあげています。

また日本・世界を股にかけて活躍するブレイクダンスチーム「FOUND NATION」にも所属しており、年上のダンサーたちから日々様々なことを吸収し続けています。

ちなみにFOUND NATIONはリアルアキバボーイズ(RAB)のエース・DRAGONさんが仲間たちと創ったチームだったりします。

DRAGONさんは2015年のRed Bull BC ONE東京大会で優勝した時、優勝インタビューでIsseiくんを日本トップブレイクダンサーであるTaisukeさんと並べて「ヒーロー」と表現し、2人に負けないように頑張りたいと言っています。

日本トップのチームの創設メンバーから「ヒーロー」と呼ばれるダンサー、それがIsseiくんなのです!

「Red Bull BC One」ってどんな大会?

Red Bull BC One World Final 2016の決勝を見る前に、「Red Bull BC One」という大会について掘り下げておきましょう。

本大会はスイス発祥の世界最大の1on1形式のブレイクダンスバトル大会です。世界各地で予選が開催されますが、世界大会(Red Bull BC One World Final)に出場できるのはたった16人。しかもこのうち15人は招待B-boy。予選を勝ち上がることで出場できるのは1人だけです。

勝敗はその場でDJが選んだ音楽に対して各ダンサーが即興で踊り、その技術力や表現力、インパクトなどを総合して審査員がジャッジを下します。基本は1回のバトルで1人3回ずつ交互に踊りますが(3ラウンド制)、決勝だけは5ラウンド制となっています。

大会のレベルは文字どおり「世界一」。世界中のブレイクダンサーが「勝つ事よりも、出場するだけで名誉なこと」と言うほどの超ハイレベルな大会とされています。

にもかかわらず、2016年大会の16人の出場者のうち、なんと3人が日本人だったのです。Isseiくん以外の出場者はTaisukeさんとNoriさんでした。

Taisukeさんは天才的なダンスセンスで、日本のブレイクダンスシーンを引っ張り続けてきた人物です。

幼少期から世界で活躍してきた彼はRed Bull BC Oneの2007年大会にその年の最年少ダンサーとして初出場し、その後2016年までに7度出場しています。まさにブレイクダンス界のレジェンドと言えるでしょう。

そんなTaisukeさんも今年でRed Bull BC Oneのステージを去ることを決意。それに合わせて「【10年間ありがとう】写真で振り返る、TaisukeのRed Bull BC One」という記事が公式サイトに挙げられています。彼がどれだけ凄い人物かがわかりますね!

Hong 10 VS Taisuke | Quarterfinals | Red Bull BC One World Final 2016

2016年大会では1回戦のジャッジを5-0で圧勝しますが、準々決勝で本大会準優勝者となる韓国のHong 10さんとあたり、2-3で惜敗しています。それでも流れるようなフットワークと完成度の高い技は見ていて惚れ惚れします。

2013年ぶり2度目の出場となるNoriさんも、日本・世界を代表するブレイクダンサーの1人です。Taisukeさんと同じ名門チーム「THE FLOORRIORZ」に所属しているほか、大学生のダンス生を多く抱え関東代表を輩出するなど、指導者としても活躍しています。

Nori VS Victor | Quarterfinals | Red Bull BC One World Final 2016

2016年大会では準々決勝で昨年の優勝者、アメリカのビクターさんとあたり、残念ながら敗退しています。しかし音楽に合わせた正確なステップと、片手を口に添えたまま繰り出す技は、さすがと言わざるを得ません。

これらの強豪を全て押しのけてたった19歳で初優勝のベルトをつかんだのがIsseiくんなのです。

彼は2012年・2015年とこれまでに2度世界大会に出場していますが、両方の大会でNoriさんを下したビクターさんに負けています。しかし本大会では準決勝でビクターさんを下し、遂に決勝に駒を進めました!

こちらは決勝前のインタビュー映像です。「決勝への心境は?」と聞かれて「楽しむだけ」と答えたIsseiくん。さあいよいよ決勝の模様を見ていきましょう。

「Red Bull BC One World Final 2016」の決勝を解説!

相手はこれまで2006年・2013年と王座を獲得し、準々決勝でTaisukeさんを下した韓国のHong 10さん。32歳のベテランならではの伝統的なスタイル(オールドスクール)が得意なダンサーです。

対するは先進的なスタイル(ニュースクール)の急先鋒・Isseiくん。どんな戦いになるのでしょうか?

FINAL BATTLE: Issei VS Hong 10 | Red Bull BC One World Final 2016

緊張感漂う会場に登場する2人の決勝進出者。握手とハグを交わし、いよいよバトルスタートです。

出方を伺う両者。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

序盤は両者とも相手の出方を伺っています。ブレイクダンスでは「どちらが押しているか、押されているか」の印象が勝敗を大きく左右します。

そのためどちらが先に仕掛けるかというのは、大きなポイントになるのです。Isseiくんは先輩に譲るとでも言うかのように、微動だにしません。

Isseiくん1ラウンド目。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

しかし結果として先攻はIsseiくんに。1ラウンド目から高く、美しい技が決められます。このラウンドの見どころは片足をもう片方の膝に合わせたまま決められる一連のムーブです。しっかり一発目を「カマした」感じですね。

HONG 10さん1ラウンド目。指フリーズ。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

対するHong 10さんは一つ目の怪人を模した逆立ち技「サイクロプス」のほか、音楽に合わせたステップ、そしてラストの指で静止する「指フリーズ」で応戦します。

Isseiくん2ラウンド目。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

やや押され気味のIsseiくんは、持ち前の体力を生かした派手な技で応戦します。足を広げて回る「ウィンドミル」から逆立ちになる技を2度繰り返し、流れるようなフットワークから体を地面に投げる「ボム」をお見舞い!

HONG 10さん2ラウンド目。スワイプス。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

Hong 10さんはこれに対して手を軸にして脚を横方向に旋回させる「スワイプス」に始まり、流れるように技をつなげていきます。この辺りの流れるようなコンビネーションはさすがベテランです。

Isseiくん3ラウンド目。エルボーフリーズ。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

折り返しラウンドとなる3ラウンド目。Isseiくんはスワイプスからコンビネーションをつなぎ、最後は肘一本で静止するエルボーフリーズを決めたあと、いくつか技を繰り出すだけで終了します。後半戦のための体力温存というところでしょうか。

HOG 10さん3ラウンド目。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

かなりコンパクトにまとめたIsseiくんに対し、Hong 10さんはここで畳み掛けて来ます。後ろに倒れこんでからの片手エアチェアーで始め、そこからバッチリ音に合わせてコンビネーションを繋いでいきます。この辺り、Isseiくんがやや押され気味でしょうか。

Isseiくん4ラウンド目。首で跳ね上がった瞬間。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

続く4ラウンドもIsseiくんはやや短めにまとめますが、内容は濃密です。スピン系の技を見事に組み合わせ、締めは鮮やかなヘッドスピンから手を使わずに跳ね上がる荒技を見せつけます。

HONG 10さん4ラウンド目。やや疲れが見える。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

Hong 10さんはやや体力が厳しくなったのか、細かなステップやムーブで応戦します。最後もやや尻すぼみで、ラストラウンドのために温存した感が否めません。そうは言っても超ハイレベルなのは間違いないのですが……。

Isseiくんラストラウンド。綺麗に伸びた脚。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

そしてラストラウンド。会場のテンションも最高潮に盛り上がります。ここでIsseiくんは自分のベストを出しきります。持ち前の「速く」「正確で」「美しい」ムーブを連続で繰り出し、完璧なラウンドに仕上げたのです。マジでブレイクダンス界の羽生結弦くんやでえ……。

HOG 10さんラストラウンド。踊りながら脱ぐ。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

しかしHong 10さんも負けてはいません。タンクトップ1枚になり、超本気モードになったHong 10さんはなんとグルグルと回りながらタンクトップを脱いでしまいます。この動き、本当に人間か?(汗)

ただ、やはりスタミナ切れなのか最後はやや精彩を欠いた動きでフィニッシュ。結果はジャッジに委ねられます。

Isseiくん優勝決定の瞬間。

出典:https://youtu.be/veAripGsyuM

5人のジャッジのうち4人の結果は2-2で引き分け。そして最後のジャッジの札には「ISSEI」の5文字が!日本人初の王者の誕生です!

「ダンスだけして生きていきたい」

歴史に残るオールドスクールvsニュースクールを制したのは、たった19歳の日本人でした。20歳を前に世界を制してしまったIsseiくんですが、そんな彼の「夢」は何なのでしょうか。

Episode 1 ― Issei

「俺の夢はダンスだけして生きていければいいかなと思います」彼は2015年のRed Bull BC One World Final前後に撮影されたこのインタビュー動画の中でこう答えています。

Taisukeさんは大会後に「Isseiの時代を、全力でサポートしたい」とコメントしています。Isseiくんは日本トップダンサーから直々に後継者としてのバトンを渡されたのです。

彼がこの先、日本のブレイクダンスを盛り上げていく存在になることは間違いありません。今後の「B-boy Issei」も、要チェックですよ!

トップ画像出典https://youtu.be/veAripGsyuM
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鈴木 直人
フリーのウェブライター。ファッションやサブカル、ビジネス、自己啓発など守備範囲は広い。非リアでぼっちだが、そんな自分をこの上なく愛している。