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ニコニコ動画で関連動画再生総数4000万回を超える超人気ボカロ楽曲の実写映画化、『脳漿炸裂ガール』。
音楽プロデューサー・れるりり氏によって生み出されて以来、「歌ってみた」「弾いてみた」「踊ってみた」「みなぎってみた」等の関連動画が続々登場し、2012年最大のボカロヒット曲となった『脳漿炸裂ガール』は現在、ボカロ曲の枠組みを超えたメディアミックスを展開中。

本作は、累計45万部のベストセラーを更新中の小説版『脳漿炸裂ガール』をベースとし、小説版を手掛けた人気作家・吉田恵里香氏自らが脚本を担当する“ボカロ史上初”の実写映画作品となっている。

ドーラでは、いよいよ7月25日(土)全国ロードショーの迫る映画『脳漿炸裂ガール』を前・後編に分けて大特集!
本編の魅力に迫ってみた前回に続き、後編の今回はその仕掛け人、映画『脳漿炸裂ガール』プロデューサーである細谷まどか氏に直撃インタビューを敢行。
映像化に至った経緯やその思いなど、制作の裏側をうかがいました。

 「妄想脳」が刺激されての映画化

――今回の映画を制作するきっかけは?

小説版「脳漿炸裂ガール」の第一巻発売前に、小説の関係者の方から映像化の相談を受けました。原曲を知らなかったので、まずニコニコ動画で曲を聴きました。そのまま10回以上リピート再生した記憶があります。メロディ・歌詞ともに聴く者を虜にする中毒性・魅力があると感じました。「どうせ100年後の今ごろにはみんな死んじゃってんだから」など、突き放した諦念を感じさせる一方で、「だからこそ開き直って何でもやってしまえ」という、失敗を恐れ、冒険を躊躇しがちな現代の日本人に対する痛切なメッセージを勝手に感じ取ったんです。

楽曲をリピートして聴くうち、思い迷い葛藤する何人もの女の子たちの姿が勝手に脳内を歩き回りはじめました。想像脳、妄想脳が刺激されたと言いますか、楽曲の枠を超えて物語が生まれる余地のある曲だと感じました。それから出版前の小説のゲラを読ませていただいて。私の頭に出て来たものとは異なる、吉田恵里香さんだからこそ描ける素晴らしい物語がそこにはありました。サバイバルゲームのゲーム性、二人の“はな”の友情、思春期ならではの女の子の葛藤、そういったものが見事に描かれていて「10代の女子たちは夢中になって読むであろう」と直感しました。それが2013年秋のことです。

――ボカロ楽曲を映像作品にすることでどのような苦労がありましたか?

音楽とは、聴き手の性格・環境により、それぞれが違う想いをその曲に抱く。聴き手の想像にゆだねられる範囲が広いんですね。対して、曲に物語をつけるという行為は、言葉数を増やし行間を埋めて行く作業です。結果、聴き手にゆだねられていた想像の余地・解釈をある意味、狭める行為にもつながります。

過去に『ハナミズキ』などJ-POPを元に映画が出来た事例はありましたが、私自身、元になった曲もそこから生まれた映画も大好きです。解釈の限定を余儀なくされますが、作り手に楽曲へのリスペクトがあるからでしょうか、映画として素晴らしい作品になっていました。であれば『脳漿炸裂ガール』も我々作り手が楽曲へのリスペクトをもって映画を作れたら、ボカロ楽曲であってもそれらと何ら変わりはないのではと考えました。

ボカロ曲を知らなかった人に新しい世界を紹介したい

――作品を作り上げていくなかで意外な発見などはありましたか?

ボーカロイド音楽は、若者を中心に支持され、カラオケ、CDショップなどでもジャンルとして確立しています。ただ、年配の方を中心に、聞いたことも知識もないという人もまだまだいるジャンルです。実際、会社に「ボカロ曲を元にした映画を作りたい」と提案した際、「ボカロとは…」から説明をしなくてはいけないことが少なくありませんでした。下手したら「ニコニコ動画とは…」が必要なことも。

こんなに魅力的なものをまだ知らない人が世間には沢山いる。ということは、私が初めて『脳漿炸裂ガール』を聴いて夢中になったように、映画にすることで、ボカロ曲を知らなかった人に新しい世界を紹介することにつながるのではないかと強く感じました。

――本編についてですが、当初は弱気な性格が目についた主人公の《ハナ》が、後半のクライマックスではかなりしっかりした性格へとシフトしたように感じました。

10代の頃の自分を思い起こすと、自分はどういう人間なのか、友達と自分は何が違うのか、そしてそんな想いを100%分かち合える親友が欲しくて必死でした。《ハナ》は、聖アルテミス女学院に通ううちに気付いてしまいます。残念ながらどうやら自分は「イケてる」、「あっち側」の人間ではないのだと。

そんな彼女は《はな》と出会い“無条件に信じあえる存在”とはじめての友情を育みます。《はな》は頭のいい強い、いわゆる「イケてる」「あっち側」の女の子ですが、あることをきっかけに心が折れそうになってしまいます。けれど《ハナ》の存在によって、最終面接まで《ハナ》を守ると決意することで、強い心を保ちました。

物語の最後、《ハナ》は本心では不安や怖さで一杯の状況ですが、無条件に自分を守り信じてくれた《はな》のためにも、今度は自分が立ち上がろうと決意します。《はな》の存在や行動が《ハナ》を強くした。人は自分のために強くなるには限界があります。大切な誰かの存在があるから強くなれるのではないでしょうか。

――映画のここを楽しんでほしいというポイントは?

ボーカロイド音楽、ボカロ小説の映像化ということで、アベユーイチ監督が、実写映画ではありますが、どこかアニメ的な世界観を作り上げてくださいました。


制服・照明・美術、すべてがこの世界観を生み出しています。この世界観、ぜひご覧いただきたいです。

またこの作品は劇場公開同日の深夜0時から、ある意味、映画館よりも早くニコニコ生放送にてオンライン有料上映会を行います。映画館で周囲の人の反応を見ながら映画を楽しむのもいいですが、書き込まれたコメントを見ながらパソコンや携帯でも楽しんで鑑賞いただけます。まさに今の時代ならではの映画の楽しみ方。どちらで先に観ても、また違う驚きがあると思うので、ニコ生が先か、映画館が先か、ぜひ2度以上鑑賞していただきたいです(笑)。

脳漿炸裂ガールを「映画にしてみた」を楽しんで欲しい

――ボーカロイドというのがよくわからない、という人たちでも楽しめるポイントを教えていただけますか?

全般的にボーカロイド音楽を知っている人でも知らない人でも楽しんでいただける作品になっています。
あえて挙げるならば、映画がはじまって30分くらいのところでボーカロイド版『脳漿炸裂ガール』が劇中音楽として流れます。ここは絶対にボーカロイド版でなければなりませんでした。「黄金卵の就職活動」に巻き込まれた主人公たちの不安や焦燥、疲労が描かれる場面です。ボーカロイドの感情を伴わない歌声により、不気味さが増し非常に効果的な場面となりました。

対して、映画のラスト、エンドロールには私立恵比寿中学が歌う『脳漿炸裂ガール』が流れます。映画鑑賞後《ハナ》の成長後に流れるからこそ、ここは意思を持った人間の声が歌う『脳漿炸裂ガール』である必要がありました。主人公たちと同年代の女性である私立恵比寿中学が歌う『脳漿炸裂ガール』が最後の最後、観客の心を昇華させてくれます。

――最後に、ボーカロイド音楽が従来の音楽と決定的に違うのは何だと思われますか?

原作者であるれるりりさんがおっしゃられていたのですが、れるりりさんが作られた曲に対し、「歌ってみた」「踊ってみた」が投稿されオリジナル曲から派生したコンテンツが多くの人を楽しませている。映画もそれらと変わらないのではないか、と。ようは「映画にしてみた」です。

ニコニコ動画の中で、多くの方が「歌ってみた」「踊ってみた」に参加されているのと同じように私たちも「映画にしてみた」だけであると。聴き手に楽しみ方を委ね、自動発生的にコンテンツが派生していくことを良しとする懐の深さがボーカロイド音楽なのかもしれません。

映画『脳漿炸裂ガール』
7月25日(土)全国ロードショー公式サイト:www.noushou.jp
公式Facebook:www.facebook.com/noushou3902
公式Twitter:https://twitter.com/noushou3902
ニコニコ生放送番組ページ:http://live.nicovideo.jp/watch/lv218412835
ニコニコ公式チャンネル:http://ch.nicovideo.jp/noushousakuretsu


 

(c)2015映画「脳漿炸裂ガール」製作委員会

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足立謙二
通信社記者を経てフリーに。雑誌『昭和40年男』やミニコミ誌、web向け記事など手広く執筆。特撮、アニメ、鉄道、昭和レトロ方面から最新ガジェット、ネットカルチャーなど得意分野は多岐にわたる。