大人……やめていいですか?
大人になると、あらゆるすべてのことに責任を持たなくてはいけません。「もうヤダ!」といって会社を休むわけにもいかないし、「や~めた」と言って役割を放り出すわけにもいきません。思っていることをそのまま口に出せて、気の向くまま行動できるというのは、青春時代だけの特権。そして、そのことに気づくのは、大人になってからというもの。
もしも、大人として生きることに疲れてしまったり、窮屈さを吹き飛ばしてスカッとしたいという衝動に駆られたりしたら、「SUBWAY」を見て心を癒しましょう。
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リュック・ベッソンが描いた、困った大人たち
「SUBWAY」はリュック・ベッソン監督による、こじらせ系大人のための青春映画。1984年に公開され、1986年のセザール賞で主演男優賞と美術賞、録音賞を受賞しました。今では映画界の重鎮となったリュック・ベッソンの、若き日の出世作と言えるでしょう。

空虚な生活に苛立ちを感じていた大富豪の人妻エレナ(イザベル・アジャーニ)。そこに現れた強盗のフレッド(クリストファー・ランバード)とともに、パリの地下鉄に身を隠します。ところが地下鉄は「変」な人たちの根城になっていて、夜な夜なパーティーが開かれるなど、ワンダーランドな世界が広がっていました。そしてフレッドは彼らとバンドを結成し、コンサートを開くことに……。と、ストーリーはかなり荒唐無稽。筋を追って見るとストレスが溜まってしまうので、注意してください(苦笑)。

イザベル・アジャーニをはじめ、ジャン・レノ、ジャン=ユーグ・アングラードなど、豪華キャストが続々と登場しますが、パンクな髪型に毛皮のコートを着ていたり、なぜか地下鉄でローラースケートを乗り回していたりと、みんな揃いもそろってどこか変。さらにサングラスをかけたお花売りや筋トレマニア、孤独なサックス奏者、無表情のベーシストなど、個性的な人物が出てきます。
地上で求められる規律ある暮らしに背を向け、好きなことを好きなようにやって生きるんだと言わんばかりに、彼らはどこまでも自由。例えば前半、追手から逃げるフレッドがカーチェイスのさなか、お気に入りの音楽を見つけるまであーでもない、こーでもないとカセットを窓から放り捨てるシーンあります。しかし、ぴたっとはまる音楽を見つけた瞬間、両手を叩いて無邪気に大はしゃぎ。
喜怒哀楽や行動パターンに脈略がなさ過ぎるのですが、これこそまさしく青春の特徴。でも、彼らはどう見ても20代~30代です。違和感が半端ない……。
しかしこの映画を楽しむには、ここでたじろいでいてはいけません。気に入った音楽に身を任せるように、荒唐無稽さに思い切ってダイブしてみましょう!